中東イラン戦にみる各国AIドローン戦
ー ウクライナから中東へ、そして日本への提言─
AI Drone Warfare Among Nations as Seen in the Iran War: From Ukraine to the Middle East — Policy Recommendations for Japan
2026年3月24日
発行元: 一般財団法人日本危機管理研究所
執筆者: 舩山 美保
■ キーワード
ドローン戦(Drone Warfare)/ 飽和攻撃(Saturation Attack)/ シャヘド136(Shahed-136)/ PATRIOT・NASAMS / 人工知能(Artificial Intelligence: AI)/ 電子戦(Electronic Warfare: EW)/ 光ファイバードローン(Fiber-optic Drone)/ サイバー戦(Cyber Warfare)/ 統合防空(Integrated Air Defense)/ 革命防衛隊(IRGC)/ 中国サプライチェーン(Chinese Supply Chain)/ 北斗衛星測位システム(BeiDou Navigation Satellite System)/ スターリンク(Starlink)/ 国際標準化(ITU・3GPP)/ EC-2スタンドオフジャマー(EC-2 Standoff Jammer)/ ウクライナ戦争(Ukraine War)/ 対イラン戦争(Iran War 2026)/ SHIELD構想(Synchronized Hybrid Integrated and Enhanced Littoral Defense)
■ エグゼクティブサマリー
本レポートは、イラン戦争(2026年2月〜)を入口として、現代の戦争がいかに変質しつつあるかを読み解くものである。ドローンの背後では、AI・電子戦・サイバー技術にとどまらず、部品の調達先、通信インフラの所有者、国際標準の策定権まで、技術・地政学・産業・制度が複雑に絡み合っている。日本が取るべき方向性について考察を加えるとともに、以下に主要な知見を整理する。
1.【コスト非対称の罠】シャヘド136(1機約300〜750万円)の迎撃にPATRIOT(1発約4.5億円)を消費する非対称構造がウクライナで実証され、中東でも再現されている。防空は「全弾撃墜」から「着弾許容数の計算」へと変質しつつある。
2. 【光ファイバードローンの拡散】電波妨害が効かない光ファイバー制御ドローンがウクライナで誕生し、IRGCの主力兵 器に進化しつつある。ワシントンDC近郊の米軍基地上空への到達も報告されている。
3. 【中国という「影の同盟国」】中国はロシア・イランのドローン産業に部品を供給するとともに、北斗(BeiDou)へのアクセスをイランに供与し、GPS妨害環境下でも機能する自律誘導能力をもたらしている。日本の対中部品依存と表裏一体の問題でもある。
4. 【スターリンクの二重性】米SpaceXが独占所有するスターリンクは攻守双方に転用されており、一民間企業の判断が戦場の通信を左右しうる事態が生じている。
5. 【勝敗を決めるのはソフトウェアの更新速度】実戦データを翌週の機体に反映する「短周期開発」が勝敗を左右するとみられる。日本の従来型防衛調達がこの現実に対応できているか、改めて問い直す必要がある。
6. 【日本も無縁ではない可能性】2024年2月、護衛艦「いずも」上空をドローンが飛行し映像が中国の動画サイトに拡散した。自衛隊はその接近を探知できていなかった。イラン戦の教訓は日本にも示唆するところが大きい。
■ 目次
1.コスト非対称の逆転:ウクライナから中東イラン戦へ
2.見えない第三の同盟国:中国のサプライチェーン支援
3.AI・電子戦・光ファイバー:イラン戦が示した新しい戦争の形
4.スターリンク問題:民間企業が戦場を左右する
5.日本の防衛能力:現状と課題
6.日本への政策的考察と提言
*巻末付録:主要用語解説
1.コスト非対称の逆転:ウクライナから中東イラン戦へ
ウクライナ戦争は、現代防空における根本的なパラダイムシフトを世界に示した。イランが技術移転したシャヘド136(Shahed-136:イランが開発した自爆型無人機)は全長3.5メートル、翼幅2.5メートルで、ペイロード(搭載可能な爆薬・弾頭の重量)40〜50kgを搭載し最大2,000km以上の射程を持つ。ロシアはこれをゲラン2(Geran-2、「ゼラニウム2号」:ロシアがシャヘド136を国産化・改称したもの)として大量生産・運用している。
問題はコストの非対称性(攻撃側と防御側のコスト格差が著しく開く構造)にある。1機数万ドル(約300〜750万円)のシャヘド1機を撃墜するために、防衛側はPATRIOTミサイル(米国製地対空ミサイルシステム、1発約4.5億円)やNASAMSミサイル(同・中距離防空システム、1発約1.5億円)を消費する。この構造的矛盾がウクライナで露呈し、2026年2月の対イラン戦争では湾岸諸国の防空在庫が開戦わずか2日で枯渇の懸念を生じさせた。
| 兵器・システム | 単価(概算) | 円換算(参考) | 費用対効果 |
| PATRIOTミサイル(PAC-3) | 約300万ドル | 約4.5億円 | 大量ドローンに非効率 |
| NASAMSミサイル | 約100万ドル | 約1.5億円 | 同上 |
| シャヘド136(イラン・ロシア製) | 約2〜5万ドル | 約300〜750万円 | 飽和攻撃で防空を圧倒 |
| ゲラン2(ロシア国産版) | 約2〜4万ドル | 約300〜600万円 | 日産最大1,000機体制 |
| ウクライナ製迎撃ドローン | 約1〜3千ドル | 約15〜45万円 | コスト逆転を実現 |
| LUCAS(米製・シャヘドの逆設計) | 約3〜5万ドル | 約450〜750万円 | 2025年12月より実戦運用 |
(注:本稿の円換算は1ドル=150円を基準として算出)
ウクライナが開発した迎撃ドローンは1機あたり約1,000〜3,000ドル(約15〜45万円)で、シャヘドの10分の1以下のコストで撃墜を実現している。2025年には年産10万機体制を確立し、首都キーウ上空ではシャヘド撃墜の70〜80%を迎撃ドローンが担う月も出現した。
米国もまたこの教訓を吸収した。2025年12月、米軍はシャヘド136を逆設計したLUCAS(Low-Cost Unmanned Combat Attack System:低コスト無人攻撃システム、シャヘド136を逆設計して開発)を開発し、2026年2月28日の対イラン作戦「オペレーション・エピック・フューリー」(2026年2月28日発動、米・イスラエル合同による対イラン軍事作戦)で初の実戦投入を果たした。世界最強の軍事大国が「敵のドローンをコピーして使う」という事態は、現代戦の論理を端的に示している。
| 飽和攻撃の論理──なぜPATRIOTでは勝てないのか 飽和攻撃(Saturation Attack)とは、防御側の迎撃能力を数で超えることで、一部を必ず着弾させる戦術である。イランは2026年3月1週間だけで2,000発以上のシャヘドを投入したとされる。 PATRIOTシステム1基が同時に処理できる目標数には物理的な限界がある。迎撃率80%でも残り20%が重要インフラに着弾し続ければ、インフラは確実に崩壊する。「防空とは全弾撃墜ではなく、何発着弾を許容するかの計算である」──これが飽和攻撃の基本的な論理である。 ロッキード・マーティン社のPATRIOT迎撃ミサイル(PAC-3)の2025年年産数は約600発。2027年までに2,000発へ増産する計画だが、対イラン戦争開戦2日でUAEだけで174発の弾道ミサイル、689機のドローン攻撃を受けた現実と比較すると、在庫の脆弱性は明らかである。 |
2.見えない第三の同盟国:中国のサプライチェーン支援
ロシアとイランの「ドローン同盟」は広く知られているが、もう一つの重要なプレーヤーとして中国の存在を見落とすことはできない。
① 部品供給という「偽装中立」
習近平政権は「ウクライナ戦争で中立」を自称してきた。しかし実態は、大量の軍民両用部品がロシア・イランのドローン産業を支えている。
- ウクライナ国防情報局(DIU)が2025年7月に公表した報告では、ロシアの新型ドローンの部品の半数近くが中国のCUAVテクノロジー(中国の民間ドローン部品メーカー)1社のものだった。同社は2022年10月に軍事利用目的での供給制限を宣言していたにもかかわらずである。
- ブルームバーグが2025年7月に入手したロシアのドローン製造企業アエロHITの内部文書によれば、中国の商業用ドローン大手Autel Robotics(オーテル:DJIに次ぐ中国大手ドローンメーカー)と年3万台の現地生産計画を交渉中だったことが判明。文書には「電子戦に強い無線モジュールが戦闘で高効果」との記述があった。
- 米財務省は2024〜2025年にかけて、IRGCのシャヘド系ドローン開発を支援した香港・中国本土の6つのフロント企業(Dingtai、Yonghongan、Tianleなど)に制裁を発動した。これらはいずれも「民間企業」を装いながら西側原産の電子部品をイランに横流しする機能を果たしていた。
- 2023年、中国とロシアの企業がシャヘドの複製を共同開発・試験したことを欧州の複数の情報当局者が確認。ブルームバーグが2024年7月に報じた。
② 技術・情報面での直接支援
中国は部品供給にとどまらず、情報・技術面でも支援していることが欧州情報機関によって確認されている。
- ロシアはIRGCに衛星画像と改良型通信・誘導技術を提供しているが、その一部には中国からロシアへ移転された技術が含まれている可能性が指摘されている。
- 【北斗(BeiDou)による位置情報供与】2021年にイランと中国が締結した25年間の包括的協力協定には、イランが中国の衛星測位システム北斗(BeiDou:中国版GPS、民間向け測位精度はセンチメートル単位)へのアクセスを取得できる条項が含まれていたとされる。これによりイランは、米国のGPSに依存しない自律的な航行・誘導能力を獲得した可能性がある。複数のシンクタンク分析によれば、イランのミサイル・ドローンの一部が北斗を活用したGPS非依存の誘導能力を持つに至っているとみられており、スウォーム(swarm:蜂の群れのように複数機が自律的に連携して飛行する戦術)飛行への応用も技術的に可能とされている。北斗の民間向け測位精度はセンチメートル単位に達しており、GPS信号を遮断・欺瞞されても機能する誘導能力をイランにもたらし得る点で、中国の支援の中でも特に戦略的な意義を持つと考えられる。
- イランの新型ステルスジェットドローンハディッド110(Hadid-110、別名Dalaho:イランが独自開発したジェット推進型の長距離攻撃ドローン)は2025年2月に公開され、同年5月の上海協力機構(SCO)合同演習「サハンド2025」でイランの東アゼルバイジャン州において実施された対テロ訓練に使用された。この演習には中国・ロシア・パキスタンら10カ国が参加しており、ドローン技術の「同盟内共有」が実際に進行している。
- 「日本のドローン部品の脱中国依存が急務」──2025年6月の「Japan Drone 2025」展示会でスタートアップ各社が口を揃えて指摘したところである。フライトコントローラー、モーター、バッテリー、センサー──これらの大半は依然として中国製であり、有事には調達が途絶するリスクを内包している。
| コラム:ロシア・イラン・中国の「影の三角同盟」 この三国が形成する非公式の技術協力体制は、単純な武器移転以上の複雑さを持つ。 イラン → ロシア:シャヘド136の設計・製造ライセンスと技術者派遣ロシア → イラン:衛星画像・改良通信技術・誘導システムの提供(欧州情報機関確認)中国 → ロシア/イラン:半導体・センサー・バッテリー・フライトコントローラー等の部品供給、一部ドローン機体の共同開発(フロント企業経由)、および北斗(BeiDou)衛星測位システムへのアクセス供与(2021年包括的協力協定に基づく) 中国の役割は「製造拠点」「部品調達網」「技術移転の回廊」「衛星測位インフラの提供者」という四重の機能を果たしている。表向きは「中立」を維持しながら、制裁の抜け穴を利用した技術支援が継続している。米国が中国に対して厳しい姿勢を取れない背景には、米中経済の相互依存という現実もある。この構造は当面継続する可能性が高い。 |
3.AI・電子戦・光ファイバー:イラン戦が示した新しい戦争の形
① AIが変えた「探知から撃墜まで」
迎撃ドローンの実戦運用で最大の革新は、AIによるマルチセンサー統合処理にある。音響センサー・レーダー・光学カメラのデータをリアルタイムに融合し、低コストのエッジAIチップ(通信を介さずに機体内部でAI処理を行う演算素子)が機体に搭載されて自律追尾・判断を行う。ウクライナのZerov-8等は完全AI自律追尾を実現し、「人間の意思決定を介さない脅威対処」が現実となっている。
攻撃側のドローンも急速に進化している。2026年初頭、ウクライナ軍が撃墜したロシアのゲラン2から、Raspberry Pi 5マイクロコンピュータと中国製Mini PC(Windows 11稼働)が発見された。これらは画像認識AIで目標を自律識別するシステムの一部とみられ、ドローンが「見て判断する兵器」へと進化していることを示している。
② 電子戦の攻防──ジャミングは「月単位のいたちごっこ」
通信妨害(ジャミング:電波を使って敵の通信・制御信号を妨害する技術)とGPSスプーフィング(偽の位置情報信号を送り込んでドローンを誤誘導する技術)が日常的に展開される現代戦では、この攻防が勝敗を分ける。ウクライナ戦線では電子戦の対抗技術が月単位で更新され、ソフトウェアのアップデート速度が戦況を左右する構造に変化した。
| 区分 | 手口・技術 | 対抗・影響 |
| 攻撃側 | GPSスプーフィング(偽信号) | 敵ドローンを誤誘導・迷走させる |
| 攻撃側 | 通信妨害(ジャミング) | 制御信号を遮断、帰還or墜落 |
| 攻撃側 | 後方赤外線スポットライト | 迎撃パイロットの視界を強烈に妨害 |
| 攻撃側 | AI飛行パターン変更 | 従来の探知アルゴリズムを無効化 |
| 防御側 | 光ファイバー制御 | 電子妨害を物理的に無効化(最重要) |
| 防御側 | メッシュ分散通信 | 一点妨害では機能停止しない構造 |
| 防御側 | 機体側AI自律判断 | 通信遮断時も飛行・攻撃継続可能 |
| 防御側 | マルチバンド周波数切替 | 単一周波数ジャミングへの対抗 |
③ 光ファイバードローン:イランが「どこから」手に入れたのか
電子戦時代の最大の「切り札」として登場した光ファイバー制御FPVドローン(FPV:First Person View、操縦者がドローンの視点で映像を見ながら操作する方式)は、もともとウクライナ戦場で誕生した技術である。無線信号の代わりに光信号をケーブルで伝送するため、原理的にジャミングが不可能。
ロシアはウクライナのクルスク州掌握作戦でこの技術を大量展開し、2025年以降は全戦線に拡大した。その後の技術拡散の経路は以下の通りと推定される:
- 【直接移転ルート】ロシアがウクライナで実戦実証した光ファイバードローン技術を、イランとの軍事技術協力協定の枠内でIRGCに提供した可能性が最も高い(欧州情報機関は「ロシアがIRGCにドローン戦術の具体的助言を提供している」と確認)。
- 【中国経由ルート】光ファイバーの原材料・製造技術は中国が世界最大の生産国である。興味深い事実として、2025〜2026年にかけて「中国メーカーによる光ファイバー価格の急騰により、光ファイバーの一巻よりStarlinkの端末の方が安くなった」という現象が報告されている。中国の光ファイバーサプライチェーンを通じた技術・資材供給の可能性は排除できない。
- 【自力開発ルート】イランは1980年代のイラク戦争の教訓から「自力開発(Self-Sufficiency Jihad)」を国策としている。IRGCの「自力充足聖戦機構(SSJO)」が内部R&Dを担い、シャヘド系ドローン製造会社Shahed Aviation Industries(IRGC航空宇宙軍傘下)が開発の中核を担う。実戦データを基にした迅速な改良サイクルは、ウクライナに匹敵するアジャイル開発体制である。
IRGCは2025年2月、商船を改造した初のドローン空母をペルシャ湾に配備し、海洋拠点からの遠洋ドローン展開能力を獲得した。米FBI・FBIも2025年末、光ファイバーFPVドローンArcher Fiber(Neros Technologies製、イスラエルKela Technologiesとの共同開発)の調達に向けた市場調査を開始している。電子妨害不可のドローンが今や主要国の標準装備となりつつある。
| 注目事案:ワシントンDC近郊軍事基地上空への侵入 2026年3月、ワシントンDC近郊のフォートマクネア陸軍基地(ルビオ国務長官・ヘグセス国防長官の居住施設を含む)上空で、正体不明のドローン複数機が10日間にわたって繰り返し検知された。同基地は国家防衛大学を擁し、キャピトルヒルとホワイトハウスから数キロの戦略的要衝である。 米軍は警戒水準を「フォースプロテクション・レベル・チャーリー(攻撃情報あり)」に引き上げ、国内複数の軍事基地で同レベルが発動された。国家主体による意図的な偵察行為か否かは確認されていない。光ファイバードローンとの関連も現時点では確認されておらず、断定は避けるべきであるが、こうした技術がウクライナを起点に拡散している現状を踏まえれば、この種の事案が持つ潜在的な戦略的含意は軽視できない。 「民間ドローンの誤飛入」と片付けるには、選ばれた場所の戦略的重要性は見過ごせない。 |
4.スターリンク問題:民間企業が戦場を左右する
① SpaceXの特許と「一民間企業が持つ地政学的権力」
スターリンク(Starlink)は米宇宙企業SpaceX(イーロン・マスク氏が設立・所有)が運営する低軌道衛星インターネットコンステレーション(constellation:多数の人工衛星を連携させてサービスを提供するシステム網)である。2025年末時点で9,357基の衛星が軌道上にあり、米連邦通信委員会(FCC)は追加7,500基の展開を承認、将来的に最大42,000基まで拡大する計画である。
スターリンクの核心技術はすべてSpaceXが米国特許庁(USPTO)に特許出願している。衛星設計・フェーズドアレイアンテナ・衛星間光通信リンク・軌道制御システム・地上端末技術など数百件の特許群がSpaceXの独占的な知的財産である。つまりスターリンクは「米国の1民間企業」が所有・運営する通信インフラであり、戦時においても民間会社の判断が軍事行動に影響を及ぼしうる構造にある。
この矛盾がウクライナ戦争で現実となった。ウクライナは2022年以降、少なくとも47,000基のスターリンク端末を確保し、ドローン制御・砲兵座標共有・分散指揮に不可欠な基盤とした。一方で2024年には、ロシア軍がシャヘドドローン(ゲラン2)にスターリンク端末を搭載し、GPSジャミング環境下でも機能するアップグレードを施したことがウクライナ軍によって確認された。スターリンクは「攻守両方の武器」となった。
| スターリンクが示した「民間地政学」 外交政策誌(Foreign Policy、2026年3月)は「スターリンクは民間企業が軌道上のゲートキーパーとなった、類を見ない事例」と指摘する。イーロン・マスク氏個人の判断が、アクティブな戦争における接続の可否を左右する──これは国際安全保障の既存の枠組みでは想定されていなかった事態である。 2026年2月〜3月の対イラン戦争でも、スターリンクは逆説的な役割を担った。イランに密輸された端末が市民の映像記録を可能にする一方、イラン軍が通信遮断目的で軍用ジャマーを動員してスターリンク信号を大規模に妨害した。接続を守る側も、奪う側も、同一の民間インフラを戦場とした。 SpaceXはスターリンクの軍事版Starshieldを別途展開し、2023年に米宇宙軍と最大9億ドル規模の10年契約を締結。商業版スターリンクと軍事版Starshieldが「つながりながら分離」している状態は、技術ガバナンスの新たな課題を提示している。 |
② 国際通信標準──なぜ「空白地帯」が生まれているのか
ドローンを制御する通信システムの国際標準化(各国・各機器が共通のルールで通信できるよう技術仕様を国際的に統一する取り組み)は、著しく遅れている。
ITU(国際電気通信連合)はドローン通信の周波数配分について2012年の世界無線通信会議(WRC-12)から議論を続けているが、2023年のWRC-23でも「商業衛星FSS(固定衛星業務)のトランスポンダを通じたドローン通信(UAS CNPC)の利用は良いアイデアか」という基本論点が未解決のまま残っている。
標準化が進まない理由は主に三つある。
第一に、周波数管理はITU、飛行安全はICAO(国際民間航空機関)という縦割り管轄の問題──どちらかの規制が他方の規制と矛盾する可能性が残る。
第二に、3GPP(第三世代パートナーシッププロジェクト)の5G/6G規格にドローン通信規格を統合する作業が進行中だが(Rel-18でUAV識別・指揮通信・センシングの統合を審議中)、民事・安全保障の両用途に対応する設計が難航している。
第三に、スターリンクのような独自コンステレーションが事実上の「標準」として先行して普及してしまっており、後追いで規格を作ることの実効性に疑問符がついている。
| 標準化機関 | 担当領域 | 現状・課題 |
| ITU-R(国際電気通信連合) | 周波数スペクトル配分 | WRC-23でUAS CNPC周波数の詳細条件を審議中も結論未達 |
| ICAO(国際民間航空機関) | 飛行安全・運航規則 | UTM(無人機交通管理)規則を策定中。ITUとの整合が課題 |
| 3GPP | 5G/6G通信規格 | Rel-17でLTE接続ドローン、Rel-18でUAV識別・ISAC統合を審議。2024〜2025年が山場 |
| IEEE | ハードウェア・プロトコル | 地上レーダーとのISAC統合規格を検討 |
| ICAO/ITU合同作業部会 | 両機関調整 | 設置はされているが決定権なし。各国の政治的合意が壁 |
③ 日本が国際標準策定に関わる意味
標準化は「制度の戦争」といえる。標準を策定した国は、その技術の仕様・セキュリティ要件・バックドアの設計権を持つ。中国はこの認識のもと、5G標準(3GPP)において自国企業(ファーウェイ・ZTE等)の技術者を組織的に投入し、標準文書に自国技術を埋め込んできた実績がある。ドローン通信の国際標準策定においても、同様の構図が始まりつつある。
日本がこの分野に早期・積極的に関与することの戦略的意義は大きい。以下の三点に集約される:
- 技術情報の早期入手:標準策定の幹事国・議長国になることで、世界の最前線技術動向・脅威情報・対抗技術の詳細を最速で得られる。外交的情報収集の回路として機能する。
- 安全保障上のバックドア排除:中国・ロシアが悪意のある仕様を標準に埋め込む動きを、技術的に検証・阻止できる立場を確保できる。
- 日本産業の国際競争力:国際標準に適合した製品は世界市場への参入障壁が低くなる。精密機器・半導体・通信モジュールに強みを持つ日本の産業界にとって、規格策定への関与は輸出競争力の源泉となる。
現在のUAS通信国際標準化で中心的な役割を担っているのは、ITU-R作業部会5C(地上サービス)および作業部会4B・4C(衛星サービス)である。3GPPではRelease-18の「NR Support for UAVs」作業グループが主戦場となっている。エリクソン(スウェーデン)・クアルコム(米国)・ファーウェイ(中国)が積極的に議長・幹事ポストを確保している一方、日本の存在感はNTTドコモ・ソフトバンクが一定の貢献をしているが、標準策定の主導的ポジションは欧米中に比べて弱い。この空白を埋めることが急務である。
5.日本の防衛能力:現状と課題
① EC-2スタンドオフジャマー:2026年3月17日、初飛行
2026年3月17日、航空自衛隊は岐阜基地においてEC-2スタンドオフ電子戦機(川崎C-2輸送機を改修した日本独自の電子戦専用機)の初飛行を実施した。日本が独自開発したJ/ALQ-5電子妨害システムを搭載し、敵の脅威圏外から敵レーダー・通信系統を無力化する「スタンドオフジャミング」(standoff jamming:安全な距離を保ちながら電波妨害を行う能力)を有する。
| 項目 | 詳細 |
| ベース機体 | 川崎重工C-2戦略輸送機(初号量産機を改修) |
| 全長/翼幅 | 43.9メートル/44.4メートル |
| エンジン | GE CF6-80C2K ターボファン×2 |
| 最大速度 | 約マッハ0.82(約1,000km/h) |
| 主要搭載機器 | J/ALQ-5(改)電子妨害装置、電子支援措置(ESM)、電子情報(ELINT)収集システム、衛星通信(SATCOM) |
| 開発費 | 約414億円(2026年度予算)。情報収集・分析能力強化の5,086億円の一部 |
| 配備計画 | 2027年度に入隊(電子作戦群・入間基地)。4機取得予定 |
| 開発期間 | 2021年〜2026年度(フェーズ1)、2023年〜2032年度(フェーズ2) |
EC-2は先行して配備されているRC-2電子情報収集機(SIGINT:Signals Intelligence、通信・電磁波信号の傍受・解析活動)と連携して運用される。RC-2が平時から中国・北朝鮮・ロシアの脅威電磁波エミッターの位置・種類をELINT(Electronic Intelligence:敵レーダー等から電子情報を収集する活動)として収集し、有事にEC-2がその情報を基に精密なジャミングを行う設計である。
防衛省2026年度予算は「電磁波領域における攻防の最前線が現代戦の本質となっている」と明記した。この認識はウクライナ戦争とその後の中東展開から直接得られた教訓であり、日本の防衛政策が大きな転換点を迎えたことを示す。
| 日本の電子戦能力:EC-2の意義と限界 EC-2はF-35戦闘機と連携して東シナ海・西太平洋での制電磁権確保を目指す。米海軍のEA-18Gグラウラー(スタンドオフジャマー)や米空軍のRC-135リベットジョイント(SIGINT)と同等の役割を、日本が初めて国産システムで担えるようになる。 【意義】 中国人民解放軍の防空レーダー・地対空ミサイル誘導システム・通信リンクを、安全圏外から無力化できる。これは対中抑止力として質的な跳躍といえる。 【限界】 EC-2はドローン対ドローンの「低コスト電子戦」には対応していない。対ドローン電子戦専用の車両搭載型ネットワーク電子戦システム(NEWS)との役割分担が必要で、対ドローン防空体系の包括的整備は依然として途上である。 |
② SHIELD構想:無人機による多層的沿岸防衛体制
EC-2と並んで注目すべき動向がSHIELD(Synchronized Hybrid Integrated and Enhanced Littoral Defense:統合強化型多層沿岸防衛)構想である。防衛省が2025年8月の令和8年度概算要求で公表したこの構想は、大量の無人機を投入して島嶼部に近づく敵の侵攻を沿岸で阻止することを目指すものだ。
2025年12月24日、小泉進次郎防衛相は記者会見で、SHIELD構築に契約ベースで1,000億円の計上が認められたと明らかにした。「新しい戦い方への備えを早急に行い、わが国の守りをより強固なものにする」と述べ、2027年度中の体制構築完了を目標に掲げている。また各無人アセットを一元的に管制するAIシステムの早期導入も並行して追求するとされている。
| SHIELD構想の課題:国産基盤の脆弱性 SHIELD構想が直面する最大の課題は、調達する無人機の大半が海外製にならざるを得ないという現実である。国内の無人機生産基盤は十分に整備されておらず、フライトコントローラー・モーター・バッテリー・センサーの多くが依然として中国製部品に依存している。 さらにSHIELDの運用にはStarlinkのような衛星通信コンステレーションが不可欠となるが、これは外国企業の判断によって運用を左右される構造的脆弱性を内包する。ウクライナがStarlinkを繰り返し遮断されて困難に直面した事実は、日本にとって対岸の火事ではない。国産の衛星通信基盤の構築が急務であるが、防衛予算規模での実現には時間と相当の追加投資が必要となる。 |
6.日本への政策的考察と提言
以上の分析、考察を踏まえ、五つの政策提言を試みる。
防衛費増額(GDP比2%目標)の枠組みをAI・ドローン統合防衛に戦略的に振り向けることが急務である。
提言1:国産迎撃ドローン生産基盤の早期確立
SHIELD構想(2025年12月発表、契約ベース1,000億円)は評価できるが、調達が海外製中心にならざるを得ない現状では有事における供給途絶リスクが残る。本レポートは以下を提言する。
第一に、DARPAモデルに倣った「防衛スタートアップ即応調達制度」を創設し、国内企業が1機数十万円台(ウクライナの実績:約15〜45万円)の迎撃ドローンを量産できる体制を令和9年度(2027年)中に確立すること。第二に、中国製部品依存からの脱却を国家目標として定め、フライトコントローラー・センサー・バッテリーの国産化ロードマップを策定すること。第三に、重要インフラ(原発・港湾・通信基地)を優先対象として「第二防空層」の配備計画を具体化すること。
提言2:AI統合防空プラットフォームの開発
現状、探知・識別・追尾・迎撃の各機能は別々のシステムが担っており、リアルタイムの統合判断に遅延が生じる構造にある。これをイラン戦における飽和攻撃の速度に対応させるには、AIによる一元的な指揮統制プラットフォームが不可欠である。NICT・防衛装備庁・民間AI企業の三者協働体制を制度化し、音響・電波・赤外線・可視光のマルチセンサーデータ融合と、エッジAIチップの国産化(TSMCの熊本工場との連携含む)を令和10年度(2028年)を目途に実現すること。また、EC-2・RC-2が収集するELINTデータをこのプラットフォームにリアルタイム統合するアーキテクチャの設計を優先課題として着手すること。
提言3:電子戦・通信防御能力の抜本強化
ウクライナ・イラン戦が示した通り、GPSジャミング・スプーフィングおよび光ファイバードローンへの対処なくして現代の防空体制は成立しない。以下の三点を提言する。
第一に、光ファイバードローンへの対抗技術(ケーブル探知・切断・EMP対策)の研究開発を防衛装備庁の重点テーマに指定すること。第二に、GPSスプーフィング耐性を持つ慣性航法・量子センサー技術の国産化と、スターリンク等の民間衛星通信を組み込んだ多重冗長通信ネットワークを整備すること。第三に、電磁波領域作戦の法的権限を自衛隊法に明記し、有事における迅速な電子戦行動を可能にする法整備を進めること。
提言4:民間技術の即応動員体制と「アジャイル調達」(迅速対応調達)の制度化
月単位で更新される現代の電子戦・AIドローン技術に対し、従来の防衛調達サイクル(数年単位の仕様固定)では対応不能である。ウクライナが示した「実戦データを翌週の機体に反映する」アジャイル開発体制を日本に移植するため、以下を提言する。
第一に、随意契約・短期反復調達を可能にする防衛調達法の改正を優先課題とすること。第二に、対ドローン実証試験場を国内に整備し、スタートアップが実戦データを迅速に開発に反映できる環境を構築すること。第三に、中国製ドローン部品への依存解消を段階的に義務付けるサプライチェーン強靭化基準を策定すること。
提言5:国際通信標準策定への戦略的参与
ドローン通信の国際標準はITU・3GPPで審議中であるが、現状ではファーウェイをはじめとする中国企業が議長・幹事ポストを確保し、標準文書への自国技術の埋め込みを進めている。標準を制する国が技術仕様・セキュリティ要件・バックドアの設計権を持つという現実を直視し、以下を提言する。
第一に、外務省・総務省・防衛装備庁・NICTが連携した「ドローン通信標準化戦略チーム」を設置し、ITU-R作業部会5C・4BおよびRelease-18の「NR Support for UAVs」作業グループにおいて日本が議長・幹事国ポストを積極的に獲得すること。第二に、エリクソン・クアルコム等の同志国企業と連携して中国・ロシアによるバックドア埋め込みを技術的に検証・阻止する枠組みを構築すること。標準化への参与は、世界最前線の技術・脅威情報を最速で入手できる「安全保障上の情報回路」としても機能することを強調したい。
■ まとめ
ウクライナ戦争で誕生した技術は中東へ、そして米国本土近傍へと連鎖している。光ファイバードローン・AIによる自律識別・スターリンク逆用──これらはすべてウクライナ起源の技術が世界に拡散した証左である。この連鎖の背後において中国のサプライチェーンが機能している点も見落とすことができない。
日本が目指すべきは「高性能装備の保有」ではなく、低コスト無人機・AI・電子戦を統合運用できる持続型防空国家への転換が求められる。2026年3月に初飛行したEC-2は、その転換の第一歩にとどまる。精密機器・半導体・ソフトウェアという既存の産業基盤を持つ日本は、この分野で主導権を確保し得る数少ない戦略的位置にある。
この問題は遠い戦場だけの話ではない。日本国内においてもドローンによる安全保障上の脅威はすでに現実のものとなっている。2024年2月、海上自衛隊横須賀基地に停泊中の護衛艦「いずも」(全長248メートル、軽空母化改修中)の真上をドローンが飛行し、その映像が中国の動画サイトBilibiliに投稿・拡散されるという事案が発生した。防衛省は約1ヵ月半の分析を経て同年5月に「実際に撮影された可能性が高い」と認定したが、自衛隊はドローンの接近を探知できていなかったことが判明している。撮影者は中国人とみられ、法的に飛行が禁止された防衛施設上空への侵入を阻止できなかった事実は、日本の対ドローン防衛体制に依然として大きな空白が存在することを示している。
ウクライナ戦争が発している最も切実な警告は「いま行動しなければ、次の危機で選択肢を失う」ということである。その「次」が日本の近傍にまで及んでいる可能性は十分に考慮すべきである。
■ 主要用語解説
【兵器・システム】
| 用語 | 解説 |
| シャヘド136(Shahed-136) | イランが開発した自爆型無人機。全長3.5m、射程2,000km超。ロシアに供与後「ゲラン2」として国産化された。 |
| ゲラン2/ゼラニウム2号(Geran-2) | シャヘド136をロシアが国産化・改称した自爆型ドローン。2023年以降、日産最大1,000機体制で大量運用されている。 |
| PATRIOT(PAC-3) | 米国製の地対空ミサイルシステム。弾道ミサイル・巡航ミサイル・航空機の迎撃に使用。1発約300万ドル(約4.5億円)。 |
| NASAMS | 米国製の中距離地対空ミサイルシステム。1発約100万ドル(約1.5億円)。 |
| LUCAS | Low-Cost Unmanned Combat Attack System。米軍がシャヘド136を逆設計して開発した低コスト無人攻撃システム。2026年2月に初の実戦投入。 |
| EC-2スタンドオフジャマー | 川崎C-2輸送機を改修した航空自衛隊の電子戦専用機。敵の脅威圏外から敵レーダー・通信を妨害する能力を持つ。2026年3月17日に初飛行。 |
| FPVドローン | First Person View(一人称視点)ドローン。操縦者がドローンのカメラ映像をリアルタイムで見ながら操作する方式。光ファイバー制御との組み合わせで電子妨害が不可能になる。 |
| ハディッド110(Hadid-110) | イランが独自開発したジェット推進型の長距離攻撃ドローン(別名Dalaho)。2025年2月に公開。ステルス性能を持つとされる。 |
| Starlink(スターリンク) | 米SpaceXが運営する低軌道衛星インターネット網。軍民両用で運用され、ウクライナ軍の通信基盤となる一方、ロシアもドローンに搭載して逆用した。 |
【軍事概念・戦術】
| 用語 | 解説 |
| 飽和攻撃(Saturation Attack) | 防御側の迎撃能力を数で圧倒し、一部を必ず着弾させる戦術。大量の安価なドローンを同時投入することで、高価な防空ミサイルシステムを消耗させる。 |
| ペイロード(Payload) | ドローン・ミサイルが搭載できる爆薬・弾頭・センサー等の重量。シャヘド136のペイロードは約40〜50kg。 |
| コスト非対称性 | 攻撃側と防御側のコスト格差が著しく開く構造。数万円のドローンを数億円の迎撃ミサイルで迎撃しなければならない不均衡を指す。 |
| 通信妨害(ジャミング) | 電波を使って敵のドローン制御信号・通信・GPS信号を妨害する技術。これに対抗するため光ファイバー制御ドローンが開発された。 |
| GPSスプーフィング | 偽の位置情報信号を送り込んでドローン・ミサイルを誤誘導する技術。ジャミングとともに現代の電子戦の主要手段。 |
| GPSスプーフィング耐性 | 偽の位置情報信号を受けても正確な航法を維持できる能力。慣性航法・量子センサー・北斗(BeiDou)等の代替手段で実現する。 |
| スウォーム飛行 | 蜂の群れ(swarm)のように複数のドローンがAIで自律的に連携して飛行・攻撃する戦術。個々の機体を撃墜しても全体の任務を継続できる。 |
| SIGINT/ELINT | SIGINT(Signals Intelligence):通信・電磁波信号の傍受・解析による情報収集。ELINT(Electronic Intelligence):敵のレーダー・電子機器から情報を収集する活動。RC-2が担う。 |
【組織・企業】
| 用語 | 解説 |
| IRGC(革命防衛隊) | Islamic Revolutionary Guard Corps。イランの精鋭軍事組織。通常軍とは別に存在し、ドローン・ミサイル開発・対外工作活動を担う。シャヘドの開発・運用もIRGC航空宇宙軍が主導している。 |
| CUAVテクノロジー | 中国の民間ドローン部品メーカー。2022年に軍事利用への供給制限を宣言しながら、ロシアの新型ドローン部品の半数近くを供給していたことがウクライナ国防情報局の調査で判明。 |
| アエロHIT(AeroHIT) | ロシアのドローン製造企業。中国企業Autel Roboticsとの現地生産計画の内部文書がブルームバーグによって報道された。 |
| Autel Robotics(オーテル) | DJIに次ぐ中国大手ドローンメーカー。ロシアのドローン企業との年3万台規模の現地生産計画を交渉していたことが報じられた。 |
【技術・インフラ】
| 用語 | 解説 |
| 北斗(BeiDou) | 中国が独自に開発・運用する衛星測位システム(中国版GPS)。民間向け測位精度はセンチメートル単位。2021年のイラン・中国協力協定でイランがアクセスを取得したとされ、GPS妨害環境下でも機能する誘導能力をもたらしている可能性が指摘されている。 |
| エッジAIチップ | クラウドや通信回線を介さず、機体内部でリアルタイムにAI処理を行う演算素子。通信が遮断された環境でも自律的に目標追尾・判断が可能になる。 |
| SHIELD構想 | Synchronized Hybrid Integrated and Enhanced Littoral Defense。日本の防衛省が推進する無人機多層沿岸防衛構想。大量の無人機を投入して島嶼部への敵侵攻を沿岸で阻止する。2025年12月に契約ベース1,000億円の計上が発表され、2027年度中の体制構築完了を目標とする。 |
| コンステレーション | 多数の人工衛星を連携させてサービスを提供するシステム網。スターリンクは低軌道に9,000基超の衛星を展開するコンステレーションの代表例。 |
| 国際通信標準(ITU・3GPP) | ITU(国際電気通信連合)はドローン通信の周波数配分を、3GPP(第三世代パートナーシッププロジェクト)は5G/6G規格へのドローン通信統合を審議する標準化機関。標準を策定した国・企業が技術仕様の設計権を持つ。 |
| オペレーション・エピック・フューリー | 2026年2月28日に米国・イスラエルが発動した対イラン合同軍事作戦。ドローンLUCASの実戦初投入、核関連施設への攻撃等を含む。詳細は参考資料(舩山美保、2026年)を参照。 |
■ 参考資料
- Council on Foreign Relations, “First Ukraine, Now Iran: A New Era of Drone Warfare Takes Hold”, March 2026
- Foreign Policy, “Starlink Has Privatized Geopolitics”, March 20, 2026
- Defense News, “Japan’s new ‘ugly duckling’ electronic-warfare aircraft takes to the sky”, March 20, 2026
- The Aviationist, “Japan’s EC-2 Electronic Warfare Jet Completes First Flight”, March 18, 2026
- Bloomberg, “中ロが戦闘用ドローンで協力──ロシア企業の文書で判明”, July 8, 2025
- Bloomberg, “中国とロシアの企業はウクライナで用いられたイランのモデルに類似した攻撃ドローンを開発している”, July 2, 2024
- Newsweek Japan, “ロシアの新型ドローンの部品は100%中国製”, July 25, 2025
- Foundation for Defense of Democracies, “U.S. Sanctions China-Based Front Companies Procuring Drone Components for Iran”, March 3, 2025
- 壺助(note),「中国→イラン:BeiDou(北斗)衛星測位システムとイランの軍事能力」, June 22, 2025
- 舩山美保,「対イラン作戦『エピック・フューリー』におけるサイバー統合の可能性 ― 統合戦におけるデジタル領域の役割分析 ―」, 一般財団法人日本危機管理研究所, 2026年3月2日
- 一般財団法人日本危機管理研究所,「中国衛星『北斗』と宇宙インフラ戦争 ― サイバー・宇宙領域に拡大する地政学競争:米中衛星能力比較 ― BeiDou and Space Infrastructure Warfare: Geopolitical Competition Across Cyber and Space — Comparing U.S. and Chinese Satellite Capabilities」, 舩山美保
- NPR, “Did the U.S. underestimate Iran’s drone threat?”, March 2026
- Time, “Iran War Creates New Demand for Ukraine’s Drone Interceptors”, March 15, 2026
- Newsweek, “Ukraine Discovers Starlink on Downed Russian Shahed Drone”, September 2024
- The War Zone, “FBI Wants To Add Fiber Optic Drones To Its Arsenal”, November 2025
- DefenseScoop, “U.S. NORTHCOM thwarted a drone threat over a strategic DC-area installation”, March 2026
- 防衛省, 「護衛艦いずも上空ドローン撮影事案に関する調査結果」, 2024年5月9日
- 日本経済新聞,「護衛艦いずも、無人機探知できず」, 2024年5月17日
- 防衛省, 「防衛力抜本的強化の進捗と予算(令和8年度予算案の概要)」, 2025年12月
- 共同通信,「無人機の沿岸防衛体制に1千億円 小泉氏、26年度予算案」, 2025年12月24日
- 3GPP, “NR Support for UAVs”, Release 17-18 specifications, 2024-2025
- RAND Corporation, Drone warfare and electronic warfare lessons, 2024
