――生成AIの電子透かしと政府AI基盤『源内』。残された時間を、日本は測れない――
全府省庁18万人が対象の政府AI基盤「源内」には、Anthropic社のClaudeが搭載され、令和8年度中には国会答弁の草案を生成するAIの開発が予定されている。同社は、生成テキストに機械可読な電子透かしを全世界で付与すると公表した。本稿ではこれらを総称して「印」と呼ぶ。猶予はあるが、その終期を決めるのは日本ではない。9月1日、この事態を想定していないガイドラインが施行される。
2026年8月15日
発行:一般財団法人 日本危機管理研究所
※本稿は日本語版です。英語版は別稿として発行予定です。
※本稿の記述は、2026年8月14日時点で公表されている情報に基づく。
キーワード:電子透かし/EU AI Act第50条/域外適用/C2PA/DS-920ガイドライン/公文書管理/AI主権
本稿の位置づけ
本稿は、当研究所が提示した「四層AI主権フレームワーク」——①データ・モデル主権、②重み・運用主権、③計算資源主権、④電力・制度主権——に基づく系列レポートの第3稿である。第1稿[7]は枠組みの構造を示し、第2稿[8]は各層が実際に崩れた事例を検証した。本稿は、②重み・運用主権に新たに生じた論点——生成された成果物の来歴情報を誰が読めるか——を、日本の行政実務に即して検証する。
エグゼクティブサマリー
・行政職員が生成AIで作成した文書に、機械可読な印が付くことが確定した。2026年8月10日、米Anthropic社は、同社のAI「Claude」が生成するテキストに電子透かしを埋め込む方針を公表した。EU AI Act(人工知能法)第50条の透明性義務が8月2日に適用開始となったことへの対応であるが、適用範囲はEU域内に限られず、日本を含む全世界に及ぶ。日本の法令はこれを求めていない。
・ただし、時期は「いま」ではない。 対象は2026年8月2日以降にリリースされるモデルであり、それ以前のモデルには法律上の経過措置がある。政府AI基盤「源内」が現在搭載するClaudeの3モデル(Sonnet 4.6、Sonnet 4.5、Haiku 4.5)は、いずれも8月2日より前のリリースである。したがって現時点で印が付いている可能性は低い(ただしこれは、搭載構成が公表されている2026年3月時点の情報に基づく推定であり、現在の構成を外部から確認する手段はない)。
・しかし、猶予の終期を日本側は決められない。 経路は二つある。第一に、源内における次のモデル更新(デジタル庁は「今後、モデルの追加・更新を予定」と公表している)。第二に、事業者による既存モデルへの遡及適用(同社は経過措置の下で対応追加作業を進めているとしている)。いずれか早い方で猶予は終わり、その時期はどちらも事業者側の判断と作業進捗に依存する。 本稿が問うのは、この構造そのものである。
・同じ時期に、源内では国会答弁作成支援AIの開発が予定されている。デジタル庁の公表資料によれば、国会質問に対する答弁の草案を生成するアプリであり、令和8年度中の開発予定とされる。答弁作成を支援するAIスキルセットは、すでに2026年3月から提供が開始されている。透かしの適用時期と、答弁作成支援AIの実装時期は、同じ令和8年度中に重なる。
・この印は、コピー&ペーストしてもテキストとともに移動し、一部の編集を経ても残りうる。同社が公表した仕様上、Claudeを校正・翻訳・要約に用いただけでも印は付く。一方で、現時点において、利用者や第三者がこの印を検出する手段は提供されていない。
・日本政府は2026年6月12日、行政における生成AIの調達・利活用に係るガイドライン2.0版を決定し、2026年9月1日から施行する。しかし本稿が本紙および別紙1〜4を通読した限り、同ガイドラインには電子透かし・来歴メタデータ(C2PA)に関する規定が存在しない。技術環境が変わったのは、施行の3週間前である。
・本稿は、この不整合を二つの空白として整理する。第一に、行政文書に外国法に由来する機械可読な印が付くことを、日本の公文書管理制度は想定していない。第二に、その印を検出できるのは現時点で生成元の企業のみであり、日本政府が独立に検証する手段を持たない。あわせて、ガイドラインの適用除外とされた領域における取扱いを、各府省庁の個別調達に関する検討課題として提示する。
・本稿は、9月1日の施行にあわせた整理、検出手段の独立確保を含む調達要件の具体化、および国会で問うべき4つの論点を提示する。
目次
本稿の位置づけ
エグゼクティブサマリー
本稿で登場する主な用語
1. 何が起きたのか――8月2日と8月10日
2. この印は何を証明し、何を証明しないのか
3. 域外適用――EUが求めていない範囲まで
4. 日本の制度は何を定めているか――9月1日施行のガイドライン
5. 二つの空白と、一つの問い
6. 日本への示唆と政策提言
7. 国会で問うべき四つの論点
8. おわりに
付録:本稿の作成過程について
参考資料
用語集
本稿で登場する主な用語
本文で繰り返し用いる最小限の用語を先に示す(その他は巻末「用語集」を参照)。
電子透かし(ウォーターマーク)……生成AIが出力するテキストに、人間には知覚できない形で埋め込まれる機械可読な信号。テキストそのものの一部として組み込まれるため、コピーしても移動する。
来歴メタデータ……画像等のファイルに付与される、そのファイルがどこで生成・処理されたかを記録した電子署名付きの情報。ファイル形式の変換や再保存で失われることがある。
C2PA……Coalition for Content Provenance and Authenticity。コンテンツの来歴を記録する業界標準規格。
EU AI Act第50条……AI生成・加工コンテンツについて、機械が読み取れる形式でのマーキングを事業者に義務付ける透明性規定。2026年8月2日に適用開始。
行動規範(Code of Practice)……第50条2項に基づき、事業者が自主的に署名する実施指針。署名企業は、その内容に沿った措置を講じることを約束する。
DS-920ガイドライン……デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」。政府職員向けの規範文書。2.0版は2026年9月1日施行。
1. 何が起きたのか――8月2日と8月10日

【確認できた事実】2026年8月2日、EU AI Act第50条の透明性義務の適用が開始された。生成AIの提供者には、生成・加工されたコンテンツを検出できる機械可読なマークの付与が義務付けられ、違反した企業には最大1500万ユーロまたは全世界年間売上高の3%の制裁金が科される可能性があるとされる[1]。
【確認できた事実】その8日後の2026年8月10日(現地時間)、Anthropic社は同社のサポートページを更新し、AI生成コンテンツへのマーキング方針を公表した。同社は、生成AIモデルと生成AIシステムの双方の提供者として、第50条2項に基づく「AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範」に署名していることを明らかにしている[2]。
公表された仕様のうち、本稿の主題に関わる点を整理する。
対象となるモデル:2026年8月2日以降にリリースされたClaudeモデルは、提供開始時点からマーキングに対応する。それ以前にリリースされた既存モデルについては法律上の経過措置があり、同社は対応の追加作業を進めているとしている[2]。
対象となる製品と地域:Claude Platform(API)、Claude、Claude Code、Claude Cowork、Claude Tagを含む、Claudeを利用するあらゆる場所での出力が対象となる。さらに、AWS、Google Cloud、Microsoft Foundry経由で対応モデルにアクセスした場合も、テキストへの電子透かしは適用される。地域については、Claudeが提供される世界中のどこであっても適用されるとされている[2]。
二つの手法:第一に、テキストに直接織り込まれる電子透かしである。人間には知覚できず、応答の意味・品質・読みやすさを変えないとされる。透かしはテキストそのものの一部であるため、コピー&ペーストによって他の場所に移してもテキストとともに移動し、一部の編集を経ても残る場合がある。マーキングはモデルのレベルで適用されるため、どの製品から出力されたかにかかわらず存在する。第二に、ファイルに付与される電子署名付きの来歴メタデータである。.svg、.png、.jpg等の対応形式で生成された際に付与され、C2PA規格に準拠する[2]。
【確認できた事実】Anthropic社のほか、Black Forest Labs、Google、Meta、Microsoft、OpenAI、Synthesiaといった各社も、EUの当該行動規範を遵守することを約束していると報じられている[3]。
1-1. 鎖は、すでにつながっている――源内とClaude
【本節の前提】前節までは事業者側の公表内容である。本節は、それが日本の行政実務とどこで接続するかを、公表資料に基づいて確認する。
【確認できた事実】デジタル庁は、政府職員向けの生成AI利用環境「源内」を内製開発し、2025年5月から運用している。同庁の公表資料によれば、職員が選択できるモデルは、AWS社のNova Lite、およびAnthropic社のClaude Sonnet 4.6、Claude Sonnet 4.5、Claude Haiku 4.5である。同資料は「今後、モデルの追加・更新を予定」とも記している[9]。源内は全府省庁約18万人を対象とした大規模実証の段階にあり、5月29日時点で約10万人が利用可能とされる[9][10]。
【確認できた事実】源内には、汎用的なチャット機能に加え、行政実務を支援する多数のアプリケーションが実装されている。デジタル庁が公表するアプリ一覧(令和8年5月29日時点)には、国会答弁の調査・分析、法制度に関する調査(愛称:Lawsy)、補助金制度調査、行政文書の用例調査、政策・法令の過去経緯の調査等が並ぶ[9]。
【確認できた事実】そのなかに、公用文を校正するアプリがある。 同一覧は「公用文を校正」として、デジタル庁・文化庁のガイドラインに準拠した公用文校正を支援するアプリを挙げており、あわせて「文章を校正・添削(ファイル添付版)」として、OfficeファイルやPDFの文章を校正・添削するアプリも実装されている[9]。前節で述べたとおり、Claudeを校正に用いた場合も印は付与される。校正という用途は、抽象的な例示ではなく、源内に実装済みの機能である。
【確認できた事実】そして、経由するクラウドも対象に含まれる。Anthropic社は、AWS、Google Cloud、Microsoft Foundry経由で対応モデルにアクセスした場合も、テキストへの電子透かしは適用されるとしている[2]。源内はガバメントクラウド上に構築されており、この経路は明示的に対象範囲に含まれる。
【重要な留保】ただし、現時点で源内が搭載するClaudeの3モデル(Sonnet 4.6、Sonnet 4.5、Haiku 4.5)は、いずれも2026年8月2日より前にリリースされたものである。 前述のとおり、マーキング対象は同日以降にリリースされたモデルであり、既存モデルには法律上の経過措置がある。したがって、源内で現在生成される文書に印が付いている可能性は低い。
【本節の前提】残る1モデルであるNova Liteについては、提供元のAmazon社が当該EU行動規範の署名企業として報じられておらず、本稿は同社のマーキング方針に関する情報を有しない。したがって以下の議論は、Claudeの3モデルを対象とする。
1-2. 答弁の草案を生成するAIが、同じ年度に予定されている
【確認できた事実】デジタル庁の同一覧には、今後の実装を検討中のアプリとして「国会答弁作成支援AI」が明記されている。その概要は「国会質問に対する国会答弁の草案を生成」であり、デジタル庁において令和8年度中に開発予定とされる[9]。
【確認できた事実】これは構想段階の記述ではない。令和7年度補正予算「ガバメントAI整備事業」(44.0億円)の内訳として、「ガバメントAIのための高度AIアプリケーション構築技術の開発実証事業2(国会答弁作成支援AIの開発)」が計上されており、受託事業者はNTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)、事業期間は2026年4月から2027年3月までとされる。その内容として、過去の国会会議録を活用した質問解析・根拠資料検索・草案生成・矛盾検証等の機能を統合的に提供することが挙げられている[9]。
【確認できた事実】さらに、答弁作成を支援するアプリ群は、すでに提供が始まっている。同資料は、2026年3月から源内において「国会答弁作成支援を行うAIスキルセット」の提供を開始したとし、政府職員が行う国会答弁の作成作業を支援するため、各種AIアプリを用途別に紹介するものと説明している。専用の「国会答弁作成支援AI」の開発は、これとは別途推進中とされる[9]。
【本節の前提】書き分けを明確にする。現時点で提供されているのは、答弁の調査・検索・整理を支援するアプリ群およびスキルセットである。答弁の草案そのものを生成するアプリは、令和8年度中の開発予定として公表されている段階にあり、稼働しているわけではない。
【推察】重要なのは時期の一致である。透かしの適用が源内に及ぶ時期(次のモデル更新または既存モデルへの遡及適用)と、答弁の草案を生成するAIの実装時期(令和8年度中)は、同じ年度に重なる。 本稿が9月1日の施行を期限として整理を求めるのは、この重なりが生じる前に制度側の整理を終えるためである。
1-3. 猶予の終期を、日本側は決められない
【確認できた事実】猶予が終わる経路は、二つある。
第一に、源内におけるモデルの更新である。デジタル庁の公表資料は、搭載モデルについて「今後、モデルの追加・更新を予定」と明記している[9]。8月2日以降にリリースされたモデルが追加されれば、その時点から対象となる。
第二に、既存モデルへの遡及適用である。Anthropic社は、8月2日より前にリリースされたモデルについて法律上の経過措置があるとした上で、それらのモデルにもマーキング対応を追加する作業を進めているとしている[2]。この作業が完了すれば、源内がモデルを一つも入れ替えなくても、現行モデルの出力に印が付き始める。
【重要な留保】さらに、現在地そのものが外部から確認できない。デジタル庁の資料が搭載モデルとして4種を挙げているのは「2026年3月時点では」という留保付きの記載であり、同じ注記が「今後、モデルの追加・更新を予定」と続けている[9]。本稿執筆時点(8月中旬)の搭載構成が3月時点と同一であるか、外部から検証する手段はない。 したがって前段の「現時点で印が付いている可能性は低い」という記述は、3月時点の公表情報に基づく推定であり、確認できた事実ではない。
【推察】ここに、本稿の中心的な論点がある。猶予の終期は「次のモデル更新」または「既存モデルへの遡及適用」のいずれか早い方であり、そのどちらも日本側が決定できない。そして終期のみならず、現在地さえ外部からは測れない。 前者はデジタル庁の判断が関わるが、追加可能なモデルの選択肢は事業者のリリース計画に依存する。後者は完全に事業者側の作業進捗の問題であり、日本政府に決定権はなく、時期を事前に知る手段も現時点では公表されていない。
事業者・モデル・経由するクラウドという三つの要素は、すでに揃っている。欠けているのは時間だけであり、その残量を日本は測れない。これは技術の問題ではなく、当研究所が四層フレームで一貫して論じてきた主権の問題である[7][8]。 本稿が9月1日の施行を期限として整理を求めるのは、測れない猶予を待つのではなく、確定している日程を使うためである。
2. この印は何を証明し、何を証明しないのか
【本節の前提】本節は、この技術の限界を正確に把握することを目的とする。政策論の前提として、この点の誤解は最も高くつく。
はじめに、本稿が主張していないことを明示する。 テキストへの電子透かしは、モデルが単語を選ぶ確率をわずかに偏らせることで信号を埋め込む方式であり、文書の内容を外部に送信するものではない。同種の技術としてGoogle社のSynthID-Textが学術誌に技術的詳細を公表しており、そこでも仕組みは生成時のサンプリング手順の変更であって、通信を伴うものではないとされている[12]。したがって、本稿が論じるのは情報漏えいの問題ではない。
論点はそこではなく、日本の制度が要求していない記録が、日本が読めない形式で、行政文書の中に残ることである。この区別を曖昧にしたまま論じることは、事実に反するだけでなく、必要な制度整理を遅らせる。
【確認できた事実】Anthropic社自身が、マーキングの限界について明示的に記述している[2]。以下、要点を整理する。
印が検出されても、コンテンツの来歴は確定しない。 検出が示すのは「Claudeによって処理された可能性がある」という点までである。同社は具体例として、校正・翻訳・要約・ファイル変換にClaudeが用いられた場合、元となった発想・文章・データが別の出所であっても、出力には印が付きうることを挙げている。また、Claudeが処理した後に、改変・抜粋・他の素材との結合が行われている可能性もある。
印が検出されなくても、AIが生成・処理していないことにはならない。 同社は、マーキング対応前のモデルによる生成物、大幅に編集・言い換え・翻訳された、あるいは他の文章に混ぜ込まれたテキスト、信頼できる信号を得るには短すぎる文章では、検出できない可能性を挙げている。ファイルのメタデータについても、形式変換・再保存・スクリーンショット等により失われうるとしている。
検出手段は、現時点で提供されていない。 同社は利用者および第三者による検出を可能にする取り組みを進めているとし、詳細は今後公開する技術文書で示すとしている[2]。すなわち本稿執筆時点において、一般の利用者が手元で確認する手段は存在しない。
【確認できた事実】ただし、その後の動きが報じられている。8月12日付の技術系ブログによれば、Anthropic社のエンジニアが、利用者自身が使えるテキスト検出APIを提供予定であること、モデル自身は透かしを付与されていることを認識していないこと、および他の研究機関も同様の透かしを追加していることを認めたとされる。同時に、編集によって除去されうるという限界も認めた上で、これは第一歩であると述べたとされる[5]。
【異なる見方】この点については、公表の在り方そのものへの批判もある。米国のテクノロジー評論家John Gruber氏は、自身のサイトDaring Fireballにおいて、「Claudeがどうマーキングするか」と題した文書が、どうマーキングするかを説明していない、という趣旨の指摘を行っている[4]。技術文書の公開が後回しにされた点への批判である。

【推察】ここから導かれる実務的な帰結は明確である。この印は、AI利用を告発する道具としては機能しない。校正に使っただけでも付き、大幅に書き直せば消えうるものだからである。それにもかかわらず、検出手段が普及した段階で「印が出た=AIが書いた」という短絡した理解が広まれば、実態と乖離した非難の応酬が生じうる。この技術の限界が事前に共有知となっているか否かが、その分岐点になる。
3. 域外適用――EUが求めていない範囲まで
【確認できた事実】EU AI Actは、その名のとおりEUの法である。にもかかわらず、Anthropic社は、マーキングを「Claudeが提供される世界中のどこであっても」適用するとしている[2]。
【異なる見方】この選択については、評価が分かれている。EUの行動規範そのものは、EU域外の利用者向けに生成されるテキストへのマーキングまでを要求していない、という指摘がある。これを原則的な一貫性の表れと読むか、二系統の推論経路を維持しないための合理的な選択と読むかは分かれるが、実務上の帰結は同じであり、マークの付かない出力を得られる非EU地域は存在しない、という見方である[5]。
【推察】本稿の関心は、この選択の当否ではなく、そこから生じる構造にある。日本の行政職員が業務でClaudeを利用する場合、その出力には、日本の法令が要求していない機械可読な印が、EU法に由来する事業者の自主的約束に基づいて付与されることになる。
この構造自体は、AI分野に限らず既知のものである。EUの規制が事実上の世界標準として域外の事業者・利用者の行動を規律する現象は、一般に「ブリュッセル効果」と呼ばれてきた。しかし本件が従来の事例と異なるのは、規律の対象が事業者の行動ではなく、利用者が作成した成果物そのものに及ぶ点である。個人情報保護規則(GDPR)が企業のデータ処理を規律したのに対し、第50条由来のマーキングは、日本の官庁が作成した文書のテキストの中に、直接痕跡を残す。
【本節の前提】念のため付言すれば、本稿はこの透明性義務それ自体の是非を評価するものではない。AI生成コンテンツの来歴を検証可能にすることには明確な公益がある。本稿が問うのは、その仕組みが日本の制度と接続されているかという一点である。
4. 日本の制度は何を定めているか――9月1日施行のガイドライン
【確認できた事実】デジタル庁は2026年6月12日、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(デジタル社会推進標準ガイドラインDS-920)の2.0版を、デジタル社会推進会議幹事会決定として策定した。同ガイドラインは、政府情報システムの整備及び管理に関するルールとして遵守すべき内容を定めた規範文書(Normative)と位置づけられる。附則により、2.0版の内容は2026年9月1日から施行される(AIガバナンスの枠組みの対象については同年7月1日から適用)[6]。
同ガイドラインが、AI生成物の識別についてどのような規定を置いているかを確認する。
【確認できた事実】表示に関する規定は存在する。 別紙3「調達チェックシート(生成AIシステム用)」の要求事項18は、「ユーザーに対し、生成AIシステムの出力を人間から発せられた情報と区別できるようにすること」を定めている。ただしこれは、不特定外部者(一般国民等)による府省庁外利用の場合に基本項目として適用されるものであり、行政内部での職員による利用には及ばない[6]。
【確認できた事実】行政文書としての取扱いに関する規定も存在する。 別紙2「生成AIシステムの利活用ルールひな形」は、生成AIを活用して職務上作成した文書について、公文書管理法等を踏まえた適切な管理を求めている。また、チャット等の入出力結果についても、組織的に共有を行った場合には行政文書となり得るとされる。その脚注では、内閣府大臣官房公文書管理課長通知(令和7年2月14日)を引き、職員がAIを活用して職務上作成した文書は、組織的に用いるものとして保有されれば行政文書になるが、正確性を確保するため必要な確認を経ることが重要であるとの整理が示されている[6]。
【確認できた事実】外国法の影響についての認識も存在する。 ガイドライン6.1.1④は、生成AIの業務利用にあたり、国外にサーバ装置を設置している場合には現地の法令が適用され、現地の政府等による検閲や接収を受ける可能性があることを、留意すべきリスクとして明記している[6]。
【確認できた事実】しかし、電子透かし・来歴メタデータに関する規定は存在しない。 本稿が本紙および別紙1〜4を通読した限り、電子透かし、C2PA、機械可読マーキングといった概念への言及は見当たらない。検証可能性、説明可能性、トレーサビリティ、データの来歴管理といった項目は詳細に規定されているにもかかわらず、生成物そのものに機械可読な印が付与されるという事態は、想定の外に置かれている。
【本節の前提】この不在は、ガイドラインの不備を意味するものではない。2.0版が決定された6月12日の時点で、Anthropic社の方針公表(8月10日)は存在しなかった。時系列上、織り込みようがなかったというのが正確な理解である。問題は、施行を目前にして前提が変化したにもかかわらず、その変化に対応する手続きが見えないことにある。

5. 二つの空白と、一つの問い
以上を踏まえ、本稿は現在生じている不整合を二つの空白として整理し、あわせて検討に値する一つの問いを提示する。
5-1. 第一の空白――公文書管理制度が想定していない印
【推察】職員がClaudeを用いて起案文書や議事録原案を作成し、それが組織的に共有されて行政文書となった場合、その行政文書のテキストには機械可読な印が含まれる可能性がある。
現行の整理では、AI活用文書について求められているのは「正確性を確保するため必要な確認を経ること」である。すなわち、成果物の質を人間が担保することに主眼が置かれており、AI利用という事実そのものを記録・開示することは求められていない。
ここに構造的なねじれが生じる。制度が記録を求めていない事実が、技術によって自動的に記録される。しかもその記録は、文書の作成者にも、当該官庁にも、現時点では読み取れない。
【確認できた事実】これは将来の想定ではない。デジタル庁は政府横断のAI基盤「源内」を運用しており、2025年6月からの大量のパブリックコメント・意見の分類処理、2026年2月からの府省庁が保有する行政文書を分析できるAIの受託開発などの取り組みを進めていることを公表している[9]。行政文書と生成AIの接点は、すでに実装段階にある。
【確認できた事実】そして、開示請求への対応業務そのものが、AI適用先として名指しされている。デジタル庁の資料は、府省庁の業務と課題を整理した一覧のなかで、「文書・記録管理(文書登録、保管・整理、情報公開)」の抱える課題として「情報公開請求で対象文書の特定に膨大な時間」を挙げ、同じ一覧で「国会対応・議会対応(質問通告対応、答弁案起草)」も、高度な生成AIが求められる業務として位置づけている[9]。
【推察】ここで輪が閉じる。開示請求された行政文書に印が含まれる可能性を問うている、その開示請求対応の業務自体に、同じAI基盤を適用する構想が公表されている。 答弁案の起草も同様である。制度の整理が追いつかないまま適用範囲が広がれば、印を含む文書を、印を検出できない体制で処理することになる。
【推察】ここから、実務上の具体的な問いが導かれる。第一に、行政文書の開示請求に対し、当該文書に機械可読な印が含まれているという事実は、開示・説明の対象となるのか。第二に、そもそも検出手段を持たない官庁は、その事実を認識できない。認識できない事項について、説明責任は成立するのか。第三に、将来的に第三者が検出手段を得た場合、官庁より先に外部が印の存在を指摘する事態が生じうる。
これらは、いずれも現行の整理では答えが用意されていない論点である。
5-2. 第二の空白――検証手段の不在
【確認できた事実】前述のとおり、検出の仕組みは今後公開される技術文書で示されるとされており、現時点で第三者が検証する手段は提供されていない[2]。
【推察】これは、日本の行政文書の来歴に関する情報を、日本政府が独立に検証できない状態が生じていることを意味する。当該印の有無を判定できるのは、現時点では生成元の企業のみである。
この論点は、当研究所が先行レポートで提示した四層AI主権フレームワークのうち、②重み・運用主権に位置づけられる新たな事例である[7][8]。従来この層で論じてきたのは、学習済みの重みを誰が管理するかという問題であった。本件が示すのは、その先にある論点――生成された成果物の来歴情報を誰が読めるか――が、同様に主権の問題たりうるということである。
5-3. 検討に値する問い――適用除外領域における取扱い
【本節の前提】以下は、前二節の「空白」とは性格が異なる。確認できた事実に基づく指摘ではなく、制度設計上の論点として提示するものである。
【確認できた事実】DS-920ガイドライン2.2.1は、特定秘密、重要経済安保情報、行政文書管理ガイドラインに掲げる秘密文書としての取扱いを要する情報を扱う政府情報システムについて、ガイドラインの全部を適用対象外としている。安全保障、公共の安全・秩序の維持といった機微な情報を扱う政府情報システムについても同様である[6]。
【推察】ここに、論理的な非対称が生じる。ガイドラインの適用除外は日本の制度上の判断であって、事業者のマーキング方針を左右しない。仮に適用除外とされた領域で当該モデルが利用される場合、そこでも印は等しく付与されうる。すなわち、日本の制度が最も慎重な取扱いを定めた領域こそ、日本の制度による規律が及ばない印を帯びるという構図になる。
【確認できた事実】この論点については、部分的な答えが公表資料にある。デジタル庁の資料は、源内について「機密性2情報まで入力可能」(デジタル庁内。府省庁は各ルールに基づき設定)と明記している[9]。すなわち源内は、設計上、特定秘密や重要経済安保情報といった適用除外領域そのものを扱う想定ではない。 6月以降の展開予定先には防衛省・原子力規制庁が挙げられているが、これは源内という機密性2情報までの基盤の展開であって、当該領域の情報を扱うことを意味しない。
【推察】したがって、この問いの宛先は源内ではない。残るのは、各府省庁が個別に調達する生成AIシステムである。DS-920ガイドラインの適用除外は、まさにその個別調達に及ぶ判断だからである。
指摘したいのは一点のみである——適用除外という制度上の判断は、事業者のマーキング方針を左右しない。この非対称が実際に問題となるか否かは、源内以外の個別調達における利用実態に依存する。それを把握しているのは政府自身であり、確認の要否を判断できるのも政府自身である。
6. 日本への示唆と政策提言
【推察】以下は筆者による推論を含む提言であり、確定した政策的結論ではない。
① 9月1日施行を前に、機械可読マーキングの位置づけを整理すること
DS-920ガイドラインは、先進的AI利活用アドバイザリーボードが運用状況を踏まえて随時見直しを行う仕組みを備えている[6]。この枠組みは、まさに本件のような想定外の技術変化に対応するために置かれたものである。施行と同時に、少なくとも以下の点について整理が示されることが望ましい。
– AI生成物に付与される機械可読な印を、行政文書の属性としてどう扱うか
– 印の存在が、情報公開請求への対応において何らかの意味を持つか
– 調達仕様書において、マーキングの有無および検出手段の提供を要求事項とするか
② 検出手段の独立確保を、調達要件として具体的に位置づけること
現行の調達チェックシートは、説明可能性・検証可能性について詳細な要求事項を置いている。同じ論理を延長すれば、生成物に付与される印について、政府が独立に検出・検証できる手段の提供を求めることは、既存の枠組みと整合的である。
【確認できた事実】この種のテキスト透かしは、一般に秘密鍵を用いた検出を前提とする。Google社が学術誌に公表したSynthID-Textの技術的説明によれば、検出はテキストと秘密鍵を用いて行われる[12]。すなわち、鍵を持たない者は検出できない。
【推察】したがって、求めるべきものは抽象的な「透明性の確保」ではなく、次の三点に分解できる。
1. 政府に対する検出手段(API等)の提供 —— 行政文書に含まれる印を、所管官庁が自ら確認できること。
【推察】この点については、事業者側に検出APIを提供する意向があると報じられている(第2章参照)。したがって求めるべきは新たな開発ではなく、提供される検出手段を日本政府が確実に利用できる立場を、調達の段階で確保することである。
2. 検出鍵の第三者預託 —— 事業者のみが検出可能という状態を解消するため、AISI(AIセーフティ・インスティテュート)等の中立機関に鍵または検出機能を預託する枠組み。所管は内閣府(AI担当)および経済産業省——AISIは情報処理推進機構(IPA)内に設置されており、経済産業省系の機関である——が中心となり、調達要件としての位置づけはデジタル庁が担うという書き分けになる。なお、2025年12月19日の人工知能戦略本部における総理指示は、AIセーフティ・インスティテュートの抜本的強化(英国並みの200人体制を目指す)について、AI担当大臣および経済産業大臣に対して示されている[9]。受け皿となる機関の拡充方針は、すでに政府の方針として存在する。
3. 調達契約への検出協力義務の明記 —— 契約チェックシートに、マーキングの有無の開示と、検出への協力を要求事項として位置づけること。
【確認できた事実】これは特定の事業者への要求ではない。Google社は既に、生成テキストへの透かしをGeminiの本番環境で運用していることを学術誌に報告しており、大規模な実運用としては先行事例とされる[12]。同社の実装においても、一般利用者が検出スコアを得る手段は提供されていないと指摘されている[13]。すなわち「事業者のみが検出できる」という構造は、一社に固有の問題ではなく、この技術に共通する構造である。したがって対応も、フロンティアモデルを提供する全事業者に対する共通の調達基準として設計されるべきものである。
③ AI利用の記録に関する考え方を、萎縮ではなく整理として示すこと
【推察】本稿が最も強調したいのはこの点である。技術的には、AI利用の痕跡は既に残り始めている。そして前述のとおり、その痕跡は「AIが書いた」ことを証明しない。校正に用いただけでも付き、書き直せば消えうる。
この非対称性を放置した場合に想定される事態は明白である。検出手段が普及した段階で、印の有無をめぐる非難の応酬が生じ、その結果として職員がAI利用そのものを避けるようになる。DS-920ガイドラインが掲げる「利活用促進とリスク管理を表裏一体で進める」という方針[6]にとって、これは最も避けるべき帰結である。
したがって必要なのは、AI利用を抑制する規律ではなく、どこまでの利用がどのように記録され、その記録が何を意味しないのかを、あらかじめ明示する整理である。印が付くことが不名誉ではないという理解が先に共有されていれば、萎縮は起きない。
7. 国会で問うべき四つの論点
【本節の前提】以下は、本稿の分析から導かれる、政府に対する事実確認の論点である。質問主意書は、内閣が原則として7日以内に答弁する義務を負う(国会法第75条)。9月1日の施行、および8月末の概算要求という日程を踏まえれば、実務上もっとも速い確認手段となりうる。以下は文案の骨子であり、そのままの形式を推奨するものではない。
問1 源内の搭載モデルと、マーキング対象の関係
政府AI基盤「源内」が搭載する生成AIモデルのうち、その提供事業者が機械可読なマーキングの対象として公表しているものはあるか。現時点で対象外である場合、(a) 今後のモデルの追加・更新に伴い対象となる見込み、および (b) 事業者による既存モデルへの遡及的なマーキング適用の見込みについて、政府はそれぞれの時期を把握しているか。把握していない場合、事業者に照会する方針はあるか。
問2 検出手段の保有と取得方針
政府は、行政文書に含まれうる機械可読なマーキングを、独立に検出する手段を保有しているか。保有していない場合、これを取得する方針はあるか。取得する場合、所管はいずれの機関となるか。
問3 情報公開請求における取扱い
開示請求の対象となった行政文書に当該マーキングが含まれる場合、その事実は開示または説明の対象となるか。政府が検出手段を保有しない場合、当該事実を認識できないこととなるが、この状態は行政機関情報公開法上の説明責務との関係でどのように整理されるか。
問4 国会答弁作成支援AIとの関係
令和8年度中に開発が予定されている国会答弁作成支援AIについて、同アプリが生成する答弁の草案に機械可読なマーキングが付与される可能性はあるか。政府はこの点を開発の要件として検討しているか。また、当該草案を基に作成された答弁書は行政文書に該当すると解されるが、マーキングの取扱いについて整理はなされているか。
【推察】これら四問は、いずれも政策的な当否を問うものではなく、事実関係の確認にとどまる。したがって答弁は可能であり、かつ答弁の内容そのものが、本稿が指摘した空白の有無を明らかにする。
8. おわりに
当研究所は先行レポートにおいて、経済安全保障推進法の基幹インフラ15分野にデータセンターの独立区分が存在せず、その空白が法改正によってしか埋められないことを指摘した[8]。本稿が扱った空白は、それとは性質が異なる。法改正を要さず、ガイドラインの見直しという既存の手続きで対応可能なものだからである。
しかし共通する構造がある。技術の変化が制度の想定を追い越し、その追い越しに気づく機会が制度側に組み込まれていないという構造である。8月2日にEUの義務が発効し、8月10日に事業者が方針を公表し、9月1日に日本のガイドラインが施行される。この三週間の並びは偶然だが、偶然だからこそ、制度が技術に追随する速度を測る目盛りになる。
そして、この8月は単に締切が近いという月ではない。デジタル庁の資料は、源内について「令和9年度以降に本格的利用(各省庁が予算措置)」と明記し、令和9年度以降の源内利用の予算措置を各府省庁の役割として位置づけている[9]。すなわちこの概算要求は、各府省庁が源内の利用を自らの恒常的な経費として計上するか否かを決める、最初の回である。 8月末は日程ではなく、判断機会である。
18万人規模の基盤を各省の常設経費に載せる判断と、その基盤の出力に外国法由来の印が付く見込みと、9月1日の施行が、同じひと月のうちに並んでいる。本稿が指摘した論点が、この機会に検討の俎上に載ることを期待したい。
付録:本稿の作成過程について
【本節の前提】本稿はAI利用の透明性を論じるものである以上、自らの作成過程を開示することが論旨の一貫性に適うと判断した。
本稿の調査過程においては、一次資料の探索・整理および草稿作成の各段階で生成AIを利用した。論点の設定、資料の取捨選択、事実と推察の切り分け、および結論はすべて筆者の判断による。本稿の記述に含まれる誤りの責任は、その全部が筆者に帰する。
なお、本稿で論じた仕様に照らせば、本稿のテキストにも機械可読な印が含まれる可能性がある。前述のとおり、その印が示すのは処理への関与の可能性までであり、記述の出所や判断の主体を示すものではない。
参考資料
[1] ITmedia NEWS「EU、AIの透明性義務の適用を開始 生成コンテンツにラベルとマーク義務、違反に最大1500万ユーロ」2026年8月4日。
https://www.itmedia.co.jp/news/article/2608/04/2000000366
[2] Anthropic「How Claude marks AI-generated content」Claude Help Center(2026年8月10日〔現地時間〕更新、各社報道は8月11日/本稿の記述は2026年8月14日閲覧時点のもの)。
https://support.claude.com/en/articles/16266773-how-claude-marks-ai-generated-content
(日本語での報道:ITmedia NEWS「Anthropic、『Claude』で生成したテキストに”見えない透かし” 日本を含むグローバルに適用へ」2026年8月12日。https://www.itmedia.co.jp/news/article/2608/12/2000000497/ )
[3] TechCrunch「Anthropic says it will watermark text generated by its AI models」2026年8月11日。
https://techcrunch.com/2026/08/11/anthropic-says-it-will-watermark-text-generated-by-its-ai-models/
(同旨:Axios「Anthropic’s text watermarks signal new front in AI detection」2026年8月12日。
https://www.axios.com/2026/08/12/anthropic-claude-watermarks-ai-detection )
[4] Daring Fireball「Anthropic Posts ‘How Claude Marks AI-Generated Content’ Without Explaining How Claude Marks AI-Generated Content」2026年8月11日。
https://daringfireball.net/linked/2026/08/11/anthropic-claude-watermarks
[5] explainx.ai Blog「Claude Invisible Watermarks — What They Detect (And Miss)」2026年8月13日。
https://explainx.ai/blog/anthropic-claude-invisible-watermarks-c2pa-august-2026
[6] デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドラインDS-920 行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」2026年6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定(本紙および別紙1〜4)。
(概要資料:https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/decb64eb-f26e-41cb-8d37-f3dd173108b8/f8e1c3b8/20260612_resources_standard_guidelines_guideline_03.pdf )
[7] 一般財団法人日本危機管理研究所「『実世界ネイティブAI』という賭け――日本はAIの主権を確立できるのか、新たな依存を生むのか」執筆者:舩山美保、2026年7月22日(四層AI主権フレームワークの初出)。
[8] 同「四層フレームの破綻事例と対策――データセンター物理攻撃、AIエージェントによる自律型侵入、輸出規制の攻防――」執筆者:舩山美保、2026年7月30日(四層フレームの適用事例)。
[9] デジタル庁 戦略・組織グループ AI実装総括班「(参考資料)ガバメントAI源内の展開状況」2026年5月(アプリ一覧は令和8年5月29日時点。搭載モデル4種および「今後、モデルの追加・更新を予定」の記載、「公用文を校正」アプリ、「国会答弁作成支援AI ※(国会質問に対する国会答弁の草案を生成。デジタル庁において令和8年度中に開発予定)」、令和7年度補正予算44.0億円の内訳(国会答弁作成支援AIの開発/NTTドコモビジネス、2026年4月〜2027年3月、草案生成機能を含む)、2026年3月からの「国会答弁作成支援を行うAIスキルセット」提供開始、および人工知能戦略本部(2025年12月19日)における総理指示(AIセーフティ・インスティテュートの抜本的強化)を含む)。
(政策ページ:https://www.digital.go.jp/policies/genai )
[10] 日経クロステック「政府が18万人で生成AI活用を実証、国産モデルも使い業務変革目指す」2026年4月2日。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/11637
[11] IT Leaders「デジタル庁、庁内生成AI基盤『源内』にOpenAIのLLMを追加、協業でガバメントAIの府省庁展開へ」2025年10月2日(国会答弁検索AI、法制度調査支援AI等の記載)。
https://it.impress.co.jp/articles/-/28441
[12] Dathathri, S., See, A., Ghaisas, S. et al. “Scalable watermarking for identifying large language model outputs,” *Nature* 634, 818–823 (2024). doi:10.1038/s41586-024-08025-4(Google DeepMind、SynthID-Text。学習に影響せずサンプリング手順のみを変更する方式であること、Geminiでの大規模実運用の報告を含む)。
https://www.nature.com/articles/s41586-024-08025-4
[13] Nemecek, A., Jiang, Y., Ayday, E. “Position: Watermarking Without Standards Is Not AI Governance,” arXiv:2505.23814(Case Western Reserve University。ICML 2025 Workshop on Technical AI Governance 採択。査読付き学術誌論文ではなくポジションペーパーである。SynthID-TextはGeminiに実装されているが、チャット画面・API経由では検出スコアが得られない旨の指摘を含む)。
https://arxiv.org/pdf/2505.23814
用語集
EU AI Act(人工知能法) EUが制定したAIに関する包括的規制法。リスクの程度に応じてAIシステムを分類し、それぞれ異なる義務を課す構成をとる。第50条は透明性義務を定め、2026年8月2日に適用開始となった。
第50条2項 行動規範 AI生成コンテンツの透明性に関する実施指針。事業者が自主的に署名し、その内容に沿った措置を講じることを約束する枠組み。Anthropic社は生成AIモデルおよび生成AIシステムの双方の提供者として署名している。
電子透かし(ウォーターマーク) テキストや画像に、人間には知覚できない形で埋め込まれる機械可読な信号。テキスト透かしの場合、テキストそのものの一部として組み込まれるため、コピー&ペーストによって移動し、一部の編集を経ても残る場合がある。
C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity) コンテンツの来歴を記録する業界標準規格。ファイルに電子署名付きのメタデータを付与し、そのファイルがどこで生成・処理されたか、および改ざんの有無を検出可能にする。
来歴(プロヴェナンス) コンテンツがどこで生成され、どのような処理を経てきたかという由来の情報。
DS-920ガイドライン デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」。デジタル社会推進標準ガイドライン群のうち、規範として遵守すべき文書と位置づけられる。初版は2025年5月27日、2.0版は2026年6月12日決定・同年9月1日施行。
AI統括責任者(CAIO:Chief AI Officer) 各府省庁における生成AI利活用方針を策定・推進し、組織全体の利活用状況とリスク管理を統括管理する者。デジタル統括責任者または副デジタル統括責任者級の職員が想定されている。
先進的AI利活用アドバイザリーボード 政府横断で生成AIプロジェクトの推進を行うため、有識者等で構成される会議体。デジタル庁が事務局を担い、DS-920ガイドラインの見直しの検討もその役割に含まれる。
行政文書 行政機関の職員が職務上作成・取得した文書であって、組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているもの。AIを活用して職務上作成した文書も、この要件を満たせば行政文書となる。
筆者:舩山美保 一般財団法人 日本危機管理研究所 理事
国際標準化、技術インテリジェンス、知的財産分析、地政学・危機管理を専門とする戦略アナリスト。キヤノン株式会社において国際標準・新技術分野の特許調査および戦略分析業務に従事。ISO/IEC JTC 1/SC 28(オフィス機器)副国際幹事として、国際規格策定および多国間交渉の調整を担い、国際標準化活動への貢献によりITSCJ国際標準化貢献賞を3回受賞。現在、中東アジア情報戦略研究所フェロー。公益社団法人 日本外国特派員協会(FCCJ)プロフェッショナル・アソシエイト会員。上智大学外国語学部卒業。青山学院大学大学院修了(国際政治経済学・哲学・心理学)。
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